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東京ステップアップ講演会

2019.12.22

歯科大手メーカーのGC友の会学術講演会 東京ステップアップ講演会に出席してまいりました。

本日は、大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 予防歯科学教授の
天野敦男先生の講演で、さすが大阪人らしく面白おかしく楽しい講演でした。
内容は、口腔内細菌及び体内細菌についてで、目から鱗でした。

タイトルは「臨床予防歯科最前線 なるほど納得! う蝕と歯周病のメカニズム」です。
かつて口腔内常在菌は抗菌剤を使用すれば追い出すことができると考えられていましたが、そうではないことがわかってきました。
以前から歯周病菌は糖尿病、低体重児早産、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となっていることが知られていましたが、細菌では100以上の疾病に関わっていることがわかってきており、歯周病菌が脳内に入り込みアルツハイマー病の原因となることもわかってきました。

口腔内細菌の感染は出生時にすでに始まっており、それは羊水内と産道内でまず感染し、また出産時に胎児の顔の向きが母親の肛門側から分娩されるのは、分娩時に母親の直腸平滑筋が収縮して便が漏れ母親の腸内細菌を感染させるためと言うことです。
従って、帝王切開児で母親からそれらの菌の感染がなく耐性菌がないため、肥満やぜんそく、アトピー、免疫不全などの発症確率が高いそうです。
そのため、帝王切開児は出生時に母親の羊水や便などを口腔内に含ませることもあるそうです。

また、最強の歯周病菌であるPg菌は18歳未満では感染されずそれ以降に感染が見られるのですが、その原因はまだ不明だそうです。
歯周病菌の感染は家庭での同じ食器や鍋などで自家箸からの感染やパートナーからの感染そしてペットからの感染などがあり、Pg菌と同等の強烈な菌であるP.gulae菌に感染している犬がなんと71%もいるそうで、犬になめられるのは厳禁だそうです。

人の口腔内では様々な齲蝕原因菌や歯周病菌が常在していますが、発症確率の全てはマイクロバイアルシフトにかかわっております。
すなわち常在菌と人体との均衡バランスが崩壊することから始まります。

昭和時代は、齲蝕になる誘発成分は砂糖(ショ糖)のみとされていましたが、平成になってショ糖だけではなくブドウ糖・果糖・調理デンプンなどの発酵性糖質も原因となり得ることがわかってきました。
調理デンプンとは、ご飯やうどんのことで虫歯になり得る食べ物はおかしなどだけではなく、日常の食事においてもなり得るので、食事の後のブラッシングが重要となります。

私も以前から疑問に思っていましたが、因みに「食後30分後にブラッシングを行った方が良い」という報道が広まっていますが、あれはやはりナンセンスだそうです。
食後すぐにプラークを落として細菌の繁殖を抑制することが、虫歯や歯周病の予防になることは間違いありません。

結果として齲蝕と歯周病はマイクロバイアルシフトにより発症するので、究極の予防はやはり古典的なプラークコントロールにつきると言うことです。

次に腸内細菌についてですが、いまや腸内細菌叢は心臓・肝臓・腎臓・脾臓・肺に次ぐ第6の臓器と言われています。
腸内細菌により体内のバランスが保たれていますが、悪玉菌の増殖により慢性炎症が起こり、慢性の下痢・腸炎・肥満・動脈硬化・肝臓癌・大腸癌・アトピーや喘息そして自己免疫疾患などの免疫異常が発症してしまいます。

善玉菌を補うためにヨーグルトを摂取すれば良いと思われがちですが、1日500グラムのヨーグルトを食べたとしても腸内細菌のわずか0.005%以下だそうで、これは琵琶湖にバケツ程度の容量だそうで、しかも腸にとっての通過菌なのでほとんど意味はないようです。
それではどうすれば善玉菌を増やすことができるかというと教授曰く「餌付け菌活」すれば良いということです。
何を食べるかによって自分の腸に住んでいる善玉菌を増やすことができるそうで、善玉菌の餌となる食物繊維とオリゴ糖を摂取することです。

食物繊維を多く含む食材としては
穀類:大麦、そば、胚芽米
芋類:サツマイモ、ジャガイモ、里芋
豆類:大豆、枝豆、納豆
野菜:ゴボウ、切り干し大根、ほうれん草
キノコ類:椎茸、シメジ、エノキダケ
海藻類:ひじき、わかめ、のり、昆布
などで海藻類が最も良いようです。

オリゴ糖を多く含む食材としては
大豆、タマネギ、ゴボウ、ネギ、ニンニク、アスパラガス、バナナ
などでオリゴ糖はビフィズス菌の大好物で善玉菌は幸せホルモンの材料を分泌します。
快感伝達物質であるドーパミン、心のバランスを保つ脳内物質であるセロトニン、幸せホルモンであるオキシトシンなどです。

オキシトシンは脳で製造され血液により全身へ運ばれて
幸せな気分になり、不安や恐怖心が減少し、社交的となり人と関わりたくなるばかりでなく、記憶力も向上します。
オキシトシンが減少している人は、コミュニケーションが成立せず、老化とともに頑固となり、人の話を聞かずにさえぎって話すようになり、自分の話ばかりする人間になるようで
まれにこのような人見かけますよね。

オキシトシンを増やす方法として
●パートナーがいる場合では
スキンシップをして触れ合うこと
見つめあること
ハグやキスそして大人の時間
などで

●パートナーがいない場合
家族と団らん
友達とおしゃべりや食事やカラオケをする
プレゼントを贈ったり人に料理を作ってあげる

●パートナーも家族もいない場合
感動して感情を素直に表す
思いやりの心を呼び覚ます
ペットとのスキンシップ
などが有効だそうです。

いつまでも健康寿命を延ばすのは「健口」と心身共に健康であることですね。